とりで通信

第138号 ケース・スタディー集(症例検討 集)に着手!


椎貝 達夫

  10月28日(水)の午後、水戸市の茨城県庁を訪問 しました。取手市議会議員 2 人にも同行いただき、は じめに副知事山口やちゑ様にお会いし、副知事のご紹 介で松岡輝昌保健福祉部 長とお話することができまし た。

 松岡部長は「糖尿病性腎症の治療成績はすばらし い。この治療のノウハウを専門医を含めた医師に十分 知ってもらう必要がある。そのための講習 会を開くこと を、県としてバックアップしたい」と発言されました。

 そこで、すでにある「慢性腎臓病保存療法 -医療 者と患 者さんの共通テキスト-」を再度改 訂し、今の 状況に合うものにすること、また新たに1例ごとの治療 法を解説する「ケース・スタディー -高度 腎不全の 保存療法-」の作成に着手しました。

 また茨城県医師会常任理事である大場正二医師 (大場内科クリニック病院院長)に電話連絡し、県の意 向を受けて何らかの講演会・勉強会の企 画をお願い しました。大場医師は「どのような企画がいいか検討す る」とのことでした。

 「ケース・スタディー -高度腎不全の保存療法-」 は医療者向けですが、患者さんが読んでも参考になる よう工夫するつもりです。冊子では 15 例以上提示し ますが、ここでは 2 例を提示します。

  2007年 から大学病院の前医にかかっていたが、 GFR が次第に低下しているため、2014年2月に当 院に来院。すでに GFR は13ml/min/1.73 ㎡に低下 し、 前 医から「1 年以内に 透析に入る」と言われてい た。

 来院直後、家庭血 圧(hBP )測 定を勧める。来院 直後の hBP は朝 145 / 95、夕 125 / 85mmHg と高かった、またグリコアルブミン(GA:正常値 20% 未満 )は 12. 6%と、 糖コントロールは良好だったので、 インスリン投 与は徐々に中止した。パリエット(プロトン ポンプ阻害薬 )は飲んだ動機がはっきりせず、また胸 やけ等の症 状もないので服 用を中止した。蓄尿による 尿蛋白排泄量 (UPE) は 0.47 g/ 日と少なかった。蛋白摂取量 (PI) は 0.55g/StWtg/ 日、食塩摂取 量 (NaClI) は 1.89g /日と食事に関しては良好と判 断した。

 来院以来 21 ヵ月が経 つが、図 1 のように GFR は 12ml/min/1.73 ㎡前後で安定。来院直後から「瞑 想 」を勧めたのも役 立っているようだ。

  前医では4つの柱のうち、1つしか実行していなかっ た。降圧薬(ニューロタン)は前医では朝服用となって いた。一般に血圧は起床直後に最高 値を示すので、 夕食後服用するのが正しい。ニューロタンを含めすべて の薬剤を夕食後服用とし、hBP は朝 120 / 75、夕 120 / 70 mmHg と血圧コントロールは良好になった。

  患者は当院の指導はキメ細かく、また病状の説明に も十分に時間をかけるので、前医の診療とは比較にな らないほど、当方の診 療が優 れていると満 足してい る。グラフで GFR が低下しないで安定していることも、 安心感をもたらしているようだ。

  喫煙は蛋白尿を増やし、腎機能も低下させるので禁 煙を指 導し、よく守っている。グリコアルブミン 14.5% と糖コントロール良好なので2015年10月よりジャヌビ ア中止を検討中。2014年8月まで GFR は低下して いたが、その後上昇、2015年10月の GFR は 29.6 と改善したまま安定している。UPE は 0.95g/ 日と少 なく、典型的な DN ではなく、食事は PI0.83g /日、 NaClI は 3.84g /日とよく守られている。

 

 

 

 

 

 

 

  前医では4つの柱のうち、ケース 1 と同じく薬物療法 のみが行われていた。降圧薬3種のうち2種が朝に投 与されており夕ではなかったので、以前より降圧が不十 分であった可能性がある。

  当院来院後の hBP は朝 150 / 70、夕 158 / 68 とコントロール良好となった。DN としては典型的ではな く、UPE は 1g /日以下だ。食事療法は良く実行され ており、来院は毎回 10 分間ほど測定値の説明をし、 GFR のグラフで改善していることを説明し、アドヒアラン スも良い。患者は医療機 関を替えて良かったと言って いる。