とりで通信

第134号 続発性副甲状腺機能亢進症 (secondary hyperparathyroidism,SHPT)


椎貝クリニック 椎貝 達夫

  副甲状腺は、甲状腺の4隅にある4つの小さな臓器で、「続発性」とは副甲状腺それ自体に原因はなく、他の原因で機能が亢進した状態です。「原発性」は腫瘍を指し、きわめて稀です。

 ほとんどが続発性の機能亢進症なので、続発性の言葉を省いて「副甲状腺機能亢進症」と呼びます。略号は「HPT」です。

 図1はCKDによる腎機能低下が副甲状腺機能亢進症を起こすに至るフローシートですが、きわめて複雑です。

図-1. 副甲状腺機能亢進症を起こすに至るフローシート

 これにさらに骨から分泌されるFGS23(骨芽細胞増殖因子23)も関係し、フローシートはさらに複雑になります。

 ここで云う「続発性」の原因とは腎臓病による腎機能低下、腎不全です。

 腎臓病になると腎臓からのリン排泄が少なくなり、体内にリンが貯留します。血清リン濃度は2.5~4.5mg/dℓに精密に保たれていますが、腎機能低下が進めば4.5mg/dℓを越え高リン血症を呈するようになります。

 おそらくこれが引き金となり、ビタミンD活性化障害が生じます(図2)。

 腎不全では低カルシウム血症(血清カルシウム8.7mg/dℓ以下)がかならず現れます。これのおもな原因はリン貯留、これによるビタミンD活性化障害です。低カルシウム血症は高リン血症(4.5mg/dℓ以上)がみられる前から生じているところからみると、リン貯留は腎不全のかなり早い段階から生じているのでしょう。そうなると、食事のリン制限は血清リン上昇が起こる前からすべき、ということになります。リンを「3.5mg/dℓ以下に保った方」が保存期の患者の生命予後が良かった、という報告があります。

 この報告が出るまでリン制限は4.5mg/dℓを越えてから、と考える人が多かったのですが、これからは3.5mg/dℓ以下に保つようにすべきでしょう。

図-2. eGFRが10以下になると血清リンは急激に上昇する

1. 副甲状腺機能亢進症は骨のみならず、血管にも影響します。

  CKD-MBD(慢性腎臓病によるミネラル・骨の異常)です。

 従来、CKDに伴う骨の異常は「腎性骨異栄養症」と称されてきました。しかし骨の異常だけでなく「血管の石灰化」を広汎に起こし、透析患者の寿命を決めていまう重大な変化を生ずることがわかり、2009年に国際会議にて「CKD-MBD」の呼称が決まりました。

 CKD-MBDの成因はきわめて複雑です。

     1. CKDステージ3の段階で、すでにCKD-MBDは始まります。

    2. GFR低下に伴い、腎臓のリン処理能力は増えます。

    3. すると骨からのFGS23の分泌が増えます。

    4. FGS23はリンが増えるのを強力に抑えます。

    FGS23:骨から分泌されます。腎臓からのリン再吸収を抑制し、同時に1-25(OH)2Dを低下させます。1-25(OH)2Dの低下は腸管からのリン吸収を抑えます。FGS23はリン再吸収抑制とビタミンD低下により、血清リン上昇を抑えます。

2.副甲状腺ホルモン(PTH)の測定、正常値

 4種類のPTH測定法がありますが、現在もっとも広く用いられ、データも集積している測定法はインタクトPTH(iPTH)です。

低カルシウム血症、高リン血症があるときiPTH<30pg/mℓであれば副甲状腺機能低下症と診断されます。

 iPTH65~30pg/mℓが正常域、>65が副甲状腺機能亢進症です。保存期腎不全ではアルファロール投与により65~30pg/mℓを目ざします。

 CKD患者さんのiPTHは図3のようにかなり広汎に分布します。

図3 PTHインタクト分布図

透析療法に入るとiPTHはもっと高くなってしまいます。各種の測定基準をみると、かなり高いレベルでも良しとしています(例:透析患者の血清リンは5.5mg/dℓまで良い)。しかしそんなに高く血清リンを設定しては、生命予後にには良くないと思います。一方CKD患者さんのなかには、iPTH<30pg/mℓ以下の人も居ます。この人達の生命予後はiPTHが高い場合よりは良い、と考えられています。

 保存期(非透析)のiPTHは「65pg/mℓ以下」を目標とすべきでしょう。

3. SHPTの治療

1)活性型ビタミンD剤

 iPTHを低くする薬剤として活性型ビタミンD(VD)剤があります。クリニックではアルファロールをおもに用いています。

 アルファロール投与で高くなったiPTHはかなり良く下がります。

活性型VD剤に共通する問題として高カルシウム血症があります。高カルシウム血症(カルシウム≧10.4mg/㎗)となると、ただちに腎機能が低下します。こうなると、もっとも大切な「腎機能の維持」が果たせなくなるので、急いでアルファロールを中止します。

 アルファロールを用いはじめると、血清カルシウム値を毎回「手帳」に記入するようにして、高カルシウム血症を監視します。

 現在高カルシウム血症を起こしにくいVD剤の開発が進められていますが、実際それが使えるのは2~3年先でしょう。

 2)リン制限

 CKDの食事療法は表1にあるようにさまざまですが、もっとも大切なものはリン制限ではないかと云われています。

 CKD=蛋白制限は全国で流布されていますが、私は蛋白制限がCKDの進行を止めた例を、一例も見出せないでいます

 蛋白制限が有効とした理由は、おそらく他の作用を効果と間違えたのでしょう。たとえば蛋白制限は血液の酸性になるのを防ぎます。蛋白は酸を作りだす蛋白(肉・魚・卵)とアルカリを作りだす蛋白(大豆蛋白、とうふ、なっとう、枝豆など)に分かれます。精進料理は酸を減らす料理です。ただし大豆を丸ごと食べるとカリウム摂取が多くなり、Stage 4~5の人では危険です。とうふは製造過程でカリウムが減っているので、積極的に摂ってよいアルカリ性蛋白です(表1)

表-1. CKDの食事療法

   蛋白摂取量は0.8g/StWtkgが好ましいと考えます(拙著 ポプラ社91頁)。あまりこれより少ないのは栄養障害が生じよくありません。しかし0.8gより多い場合はそれ程問題が生じないと考え、標準体重kg当り1.2g程話が蛋白制限になってしまいましたが、これから本題に入ります。

 ところでまずリン制限はどうして必要なのでしょうか。

 それはCKD-MBDの項に述べたように、体へのリン貯留が引き金となり、結局は骨や血管の異常を引きおこすからです。Stage 3(GFR 30~60mℓ)でリン制限を始め、リンの体への貯留をなるべく減らさなければなりません。

 3)具体的にどうリンを制限するか

 普通の食事から入るリンの量は600mgです。これをできれば半分の300mgに抑えます。

 普通食で摂ってしまうリン600mgを、卵をやめる、乳製品をやめる、干物やハム・ソーセージをやめるなどしても200mg程度しか減らすことができません。

 そこで主食である、コメ、パン、麺類のリンに眼を向けます。

 これらはいずれも低蛋白化され、同時に低リン化されたものが発売されています。

 しかし味が良いものでないと、長く食べられません。

 表2は低リン食品で味が良く、推薦されるものです。

    ところでStage 3からリン制限を始めるとなると、低リン食品の費用も問題です。しかしどの食品も価格を抑えており、それほど費用がかかりません(例 メディカルライス 1kg 850円、普通米 1kg 400円)。

-メディカルライスは米の回りを半分迄削っており、どうしても割高になります。

 4)リンを下げる薬

 食事療法ではどうしても血清リンが下がらない場合、リン吸着薬をのみます。血清リンを下げるリン吸着薬として、今まで炭酸カルシウム(カルタン)がもっとも使われてきました。非保険薬ですが、リンゴ酢カルシウムのリン吸着作用はさらに強力で、サプリメントとして多くの患者さんに購入していただきました。

 しかし最近これらの製剤によるカルシウム負荷が長期的に問題となるのではないかと云われはじめました。カルシウム剤は高カルシウム血症を起こしたり、血管その他の組織にカルシウムが沈着する可能性があるのです。

 昨年から今年にかけて発売され、使用できるようになったリン吸着薬は次の二種類です。

  • 炭酸ランタン(ホスレノール)(250mg 199.6円、500mg 294円)。

 本剤はリン酸と結合し、腸から吸収されることなく、糞便中に排泄されます。チュアブル錠で食直後に噛み砕いてのみます。これがのみにくい人は粉末製剤を食中または食直後にのみます。ランタンは骨組織に分布する点が気になりますが、今のことろ骨への悪影響は報告されていません。5%で胃腸障害が出現します。250mg、500mg錠があり、750mg~2250mgと服用範囲が広く設定されています。きわめて薬価が高い点が問題です。

  • クエン酸第二鉄水和物(リオナ)(250mg 99.8円)

 1回250mg1日3回、食直後服用。最高6000mgまでのめます。今年の秋に発売されましたので、来年秋までは2週間処方しかできません。