とりで通信

第118号 腹膜透析を併用した新しい保存療法について


国分寺南口クリニック          栗   山   廉二郎

椎貝クリニック                      椎   貝   達    夫

    慢性腎不全では、厳格な保存療法にて腎機能保持ないし改善が得られ,透析導入を大幅に遅らせることが可能となっております。それでも腎機能低下を認め、透析が必要となる場合があります(表1)。しかし腎はまだ極くわずかながら働いており、人体に不要、有害な物質の排泄以外に,内分泌器官としても働いています。腎機能がまったく無くなる血液透析では得られない、僅かながら保たれでいる腎機能を、透析(腹膜透析)を併用することにより何とか保持ないし改善させようという治療法なのです(図1,2)。この腹膜透析では尿量ゼロの血液透析と異なり、尿量が保持されるのも特徴です。

1. 一般的な腹膜透析と本治療法との比較

良好な水分コントロール

    夜間に2ℓ一回(腎機能高度低下では翌朝2ℓ追加し計2バッグとします)腹腔内に貯留するという極めて簡単な治療です(一般的な腹膜透析は一日4回交換)。全て自宅にて出来ます。体の中に貯まった大量の水(胸水、腹水、浮腫)のコントロールが容易に得られます。通常の腹膜透析ではこのような大量除水は得られません。

尿蛋白抑制効果

     腎臓機能保持を妨げる要因の一つとして、大きな役割を担っているのが尿重目です。本治療法により尿蛋白排泄量が大きく減少することがありますが、このような現象が起きるのはエクストラニールと言う液のみを用いた腹膜透析をしているからです。食事療法、血圧コントロール、薬物療法という3本柱で、尿蛋白が十分に減らない患者さんがいます。特に糖尿病性腎症では、椎貝クリニックの最近の成績でも48人中2人(4.2%)しか目標の尿蛋白0.3 g/日未満に到達しておりません。本治療での大幅な尿蛋白減少は驚異的なことなのです。使用しています腹膜透析液そのものの効果も考えられております。また血圧のコントロールが良好になることも、尿蛋白が減少する一因と考えられます。

塩分摂取量の緩和

    大量除水により塩分も相当量排出され、塩分摂取は従来の一日6-7 gである必要はなくなり、浮腫などのない患者さんでは塩分制限はかなり緩和されます。非糖尿病腎症の患者さんと比較しますと治療はより難しいのですが、新しい薬や様々な組み合わせの治療により目標に少しずつ達しようとしておりますが、従来の治療では、限界があるのです。腹膜透析組み合わせ療法は、このカべを打ち破る可能性があります。

2. いつこの治療を開始すべきか

    透析治療は一定の開始基準があります。血清クレアチニン値が8 mg/dℓ以上、あるいはクレアチニンクリアランスが10mℓ/分以下などです。日本透析医学会の腹膜透析ガイドラィンでは、「CKDステージ5(糸球体濾過量GFR 15.0 mℓ/分/1.73㎡未満)で、治療抵抗性の腎不全症状が出現した場合は透析導入を考慮する」としております。また、「糸球体濾過量が6.0mℓ/min/1.73㎡未満の場合は自他覚症状が認められない場合でも導入勘案を推奨する」としています。腹膜透析開始は、腎機能が低下し、血圧が下がらなくなったり、嘔気、食欲低下等の症状が現れ、保存療法が限界に達したとき、残腎機能保持をはじめとする腹膜透析の利点を享愛するためにも開始するのが普通です。

3. 最良の治療に向けて

    お勧めする最良の方法は、「腎機能が限界に達する少し前に、従来の保存療法を補うことを目的」としての腹膜透析を開始することなのです。今までの保存療法を無駄なく延長することが可能となります。この第2の腹膜透析併用の保存期延長療法では自己の腎臓機能が保持ないし改善される為、より健康的でより快適な日々を送れることが可能となります。

    本治療は栗山が始めてからまだ5-6年の歴史しかありません。残っている腎機能を保持、改善させるのには何がべストの食事か、何がべストの薬物治療か、何がべストの腹膜治療の組み合わせかなどなど今後、より良い方法へと進化させてゆく必要があります。今まで厳格な慣性腎不全に対する厳格な治療をしていた方々には、一度チャレンジしても良い治療と考えております。